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医療コラム

2025.07.30

【完全ガイド】突然のけがに慌てない!切り傷・やけど・打撲の正しい応急手当と処置

【完全ガイド】突然のけがに慌てない!切り傷・やけど・打撲の正しい応急手当と処置

突然のけがは、誰にとってもパニックになりがちな出来事です。

血が出ている、痛みが強い、そんな状況では冷静な判断が難しくなるのも当然かもしれません。

しかし、もしものときに備えて正しい応急手当の方法を知っておくことは、あなた自身や大切な家族を守るための大きな力になります。

この記事は、単なる手当の解説書ではありません。

不安な気持ちに寄り添いながら、いざという時に「こうすれば大丈夫」という安心感と、落ち着いて行動するための具体的な知識を提供することを目的としています。

切り傷、やけど、打撲といった日常で起こりやすいけがの処置方法から、やってはいけないこと、病院へ行くべきサインの見極め方まで、一つひとつ丁寧に整理していきましょう。

正しい知識は、不安を自信に変えてくれます。

応急手当の基本原則|まず知っておきたい3つのこと

どんなけがの処置でも、まず「安全確保」「感染対策」「専門家への相談」の3原則を意識することが重要です。慌てて行動すると、かえって状況を悪化させたり、自分自身が危険にさらされたりする可能性があるためです。

道端で倒れている人を発見した場合、まず周囲の交通状況を確認しなければ二次災害につながりかねません。また、傷口を手当てする前に自分の手を洗う、もしくは手袋を装着することは、感染を防ぐための基本的なステップといえます。

出血がひどい、意識がないといった場合は、すぐに119番通報することが最優先されます。この3つの原則を覚えておくだけで、パニックにならず、冷静な判断がしやすくなるはずです。

けがの種類受診を検討すべきサイン初期対応の最優先事項
切り傷・すり傷
  • 圧迫しても出血が止まらない
  • 傷が深い、または大きい
  • 異物が取れない
  • 動物に噛まれた
  • 感覚がない、動かせない
洗浄(流水で洗い流す)
やけど
  • 手のひらより大きい範囲
  • 顔、手足、関節、陰部のやけど
  • 水ぶくれが大きい、または破れた
  • 皮膚が白や黒に変色している
  • 化学薬品や電気によるやけど
冷却(流水で冷やす)
打撲・捻挫
  • 激しい痛みや腫れが続く
  • 変形している、動かせない
  • 体重をかけられない
  • 感覚がない、皮膚の色が悪い
  • 頭部や腹部を強く打った
安静(動かさない)

1. 安全の確保と状況判断

どのような緊急時でも、まず自分と負傷者の安全を確保することが最優先の行動です。安全が確認できない状況で手当てを始めると、救助者自身が二次災害に巻き込まれる危険があるためです。

室内で人が倒れていれば、火災やガス漏れの危険がないかを確認し、必要であれば窓を開けて換気します。屋外であれば、交通量や落下物などの危険がないかを見渡し、安全な場所へ移動させることが重要です。

次に負傷者の肩を軽くたたきながら「大丈夫ですか」と声をかけ、意識があるかを確認しましょう。反応がなければ、それは専門家の助けがすぐに必要なサインと判断できます。数秒間周囲を見渡して冷静に状況を判断することが、安全で効果的な救護につながる第一歩です。

2. 感染を防ぐための衛生管理

傷口の手当てを行う際は、感染を防ぐための衛生管理が非常に重要になります。傷口から細菌が侵入すると、治りが遅れたり、深刻な感染症を引き起こしたりする可能性があるためです。

手当てを始める前には、石けんと流水で自分の手を丁寧に洗いましょう。もし水が使えない状況であれば、救急箱に入っている使い捨てのゴム手袋やビニール手袋を着用します。清潔なビニール袋で手を覆うことでも、直接傷口に触れるのを避け、感染リスクを減らすことが可能です。手当てが終わった後も、再度手をしっかりと洗うことを忘れないでください。こうした一手間が、負傷者とあなた自身の両方を守るための大切な習慣といえるでしょう。

3. 救急車(119番)を呼ぶべき状況の見極め

応急手当の知識と同じくらい、救急車を呼ぶべき状況を正しく判断する能力が重要です。自己判断で対応できない重度のけがの場合、専門的な治療が遅れると命に関わることもあるためです。

意識がない、普段通りの呼吸をしていない、大出血している、胸の痛みを訴えているといった場合は、迷わず119番に通報してください。他にも、骨が皮膚から飛び出している、広範囲のやけど、頭や首に強い衝撃を受けた場合も緊急性が高い状況です。どう判断すればよいか不安な場合でも、通報すれば指令員が電話口で指示を与えてくれます。少しでも「おかしい」と感じたら、ためらわずに専門家の助けを求めることが最善の選択です。

【種類別】切り傷・すり傷の応急手当

日常生活で最も起こりやすい切り傷やすり傷は、正しい手順で処置すれば、きれいに治ることがほとんどです。処置の基本は「洗浄」「止血」「保護」の3ステップに集約されます。この流れを理解しておくことで、突然の出血にも落ち着いて対応できるようになるでしょう。

STEP1:まずは流水で傷口を丁寧に洗浄する

切り傷やすり傷ができたら、何よりも先に流水で傷口を丁寧に洗い流してください。傷口についた砂や土などの異物、細菌を物理的に除去することが、感染を防ぐ最も確実な方法であるためです。水道の蛇口から出る、強すぎない流水を傷口に直接あてて、数分間しっかりと洗い流します。このとき、石けんを使っても構いませんが、傷口にしみる場合は無理に使う必要はありません。

屋外で水道がない場合は、ペットボトルの水などを代用することもできます。傷口を清潔に保つことが、治癒への第一歩だと覚えておきましょう。

STEP2:清潔なガーゼで圧迫して止血する

傷口をきれいに洗浄したら、次に出血を止めるための処置を行います。傷口を直接圧迫することで血管が押しつぶされ、血が固まるのを助け、止血を促すことができるためです。滅菌ガーゼや清潔なハンカチ、タオルなどを傷口に直接当ててください。その上から手のひらで、ぐっと力を込めて3分から5分ほど圧迫し続けます。このとき、ティッシュペーパーや脱脂綿は繊維が傷口に残りやすいため、使用は避けるのが望ましいです。出血がひどい場合は、腕や足を心臓より高い位置に上げると、血が止まりやすくなります。ほとんどの切り傷は、この直接圧迫止血法で安全に出血をコントロールすることが可能です。

STEP3:傷口を保護して安静に保つ

出血が止まったことを確認したら、傷口を外部の刺激や細菌から守るために保護します。清潔な状態を保ち、傷口が乾燥しすぎないようにすることで、皮膚の再生を助け、痛みを和らげる効果が期待できるためです。

小さな傷であれば、救急絆創膏を貼るだけで十分でしょう。傷が大きい場合や、動きやすい関節部分の場合は、滅菌ガーゼを当ててサージカルテープや包帯で固定します。最近では、傷口から出る体液(滲出液)を保持して治癒を促す「湿潤療法」に対応した絆創膏も市販されています。傷口をきれいに保護した後は、なるべく動かさず安静に保つことも大切です。適切な保護を行うことで、安心して傷の回復を待つことができるでしょう。

すぐに病院へ行くべき切り傷の特徴

ほとんどの切り傷は家庭で対処できますが、中には専門的な治療が必要なケースもあります。傷が深くまで達していると、神経や腱といった重要な組織を損傷している可能性があり、放置すると後遺症が残る危険性があるためです。

10分以上圧迫しても血が止まらない場合や、傷口がぱっくりと開いて中の脂肪や筋肉が見えている場合は、すぐに医療機関を受診してください。また、ガラス片や金属片などの異物が深く刺さって取れない、動物や人に噛まれた傷、錆びた金属でのけがも感染症のリスクが高いため注意が必要です。傷の周囲がしびれたり、指が動かしにくかったりする場合も、神経損傷のサインかもしれません。これらの特徴が見られる場合は、自己判断せず、速やかに医師の診察を受けることが賢明です。

【種類別】やけど(熱傷)の応急手当

やけどは、熱湯や調理器具、暖房器具など、日常生活のさまざまな場面で起こりうるけがです。やけどの応急手当で最も重要なのは、とにかく「すぐに冷やす」ことです。皮膚の表面だけでなく、内部に残った熱が組織を破壊し続けるのを食い止めることが、重症化を防ぐ鍵となるためです。

水ぶくれの正しい扱い方や、どのような場合に病院へ行くべきかを知っておくことも、やけどの跡をきれいに治すためには欠かせません。正しい初期対応が、その後の回復過程に大きく影響します。冷静に、そして迅速に行動することが求められるでしょう。

STEP1:すぐに流水で15分以上しっかりと冷やす

やけどをしたら、一刻も早く患部を流水で冷やし始めてください。迅速な冷却は、皮膚の深部へ熱が伝わるのを防ぎ、痛みを和らげ、やけどの進行を最小限に抑える最も効果的な方法だからです。水道の蛇口から出す、勢いの強すぎない常温から少し冷たい程度の水を、やけどした部分に直接15分から30分ほど当て続けます。服の上から熱湯がかかった場合は、無理に脱がさず、服を着せたままその上から水をかけて冷やしましょう。

このとき、氷や氷水で直接冷やすのは避けてください。急激に冷やしすぎると、かえって血流が悪くなり、凍傷を起こして組織を傷つける可能性があります。痛みが和らぐまで根気強く冷やし続けることが、最善の初期治療です。

STEP2:水ぶくれは潰さずに保護する

やけどをした部分に水ぶくれができた場合、それを自分で潰さないことが鉄則です。水ぶくれの中の液体は、傷ついた皮膚を外部の細菌から守る天然のバリアの役割を果たしているためです。水ぶくれを意図的に破ると、そこから細菌が侵入し、感染症を引き起こすリスクが高まります。

水ぶくれができてしまったら、潰さないように注意しながら、清潔なガーゼや非固着性のドレッシング材でそっと覆って保護しましょう。もし自然に破れてしまった場合は、患部を優しく洗浄し、抗菌作用のある軟膏を塗ってから清潔なガーゼで覆います。水ぶくれを大切に保護することが、感染を防ぎ、皮膚の再生をスムーズに進めるためのポイントです。

すぐに病院へ行くべきやけどの症状

軽いやけどは家庭での手当てが可能ですが、重症度によっては専門的な治療が不可欠です。やけどの範囲や深さ、部位によっては、感染症や重度の瘢痕(はんこん)、さらには全身状態の悪化につながる危険があるためです。

やけどの範囲が手のひらの大きさを超える場合や、顔、手、足、関節、陰部といった特殊な部位のやけどは、すぐに病院を受診してください。また、水ぶくれが非常に大きい、皮膚が白っぽくなったり黒く焦げたりしている、痛みを全く感じないといった症状は、深いやけどのサインです。化学薬品や電気によるやけども、見た目以上に内部の損傷が激しいことがあります。特に子どもや高齢者は重症化しやすいため、軽度に見えても医師に相談しておくと安心です。

【種類別】打撲・捻挫の応急手当「RICE処置」

スポーツや日常生活での転倒などによって起こる打撲や捻挫は、適切な応急手当でその後の回復が大きく変わります。このような急性のけがに対する応急手当の基本は、「RICE処置」として知られています。これは「Rest(安静)」「Icing(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」の4つの処置の頭文字をとったものです。RICE処置の目的は、内出血や腫れ、痛みを最小限に抑え、損傷した組織の炎症反応をコントロールすることにあります。この4つのステップを正しく実践することが、早期回復への重要な鍵となるでしょう。

R(Rest):損傷部位を動かさず安静にする

打撲や捻挫をしてしまったら、まず全ての動作を中止し、負傷した部位を安静に保つことが第一です。けがをした直後に無理に動かすと、損傷した血管や神経、靭帯へのダメージが広がり、症状を悪化させてしまうためです。スポーツ中であればすぐにプレーをやめ、安全な場所に移動して座るか横になりましょう。

患部に体重がかからないようにすることが重要で、足首の捻挫などでは松葉杖が必要になることもあります。添え木やタオルなどを使って患部を軽く固定し、不必要な動きを防ぐことも有効です。まずはしっかりと休ませることが、体自身の治癒プロセスをスタートさせるための土台となります。

I(Icing):氷や冷却パックで冷やす

負傷した部位を冷やすことは、痛みと腫れをコントロールするために非常に効果的な手段です。冷却によって血管が収縮し、組織への血流が減少するため、内出血や腫れの原因となる体液の漏出を抑えることができます。

ビニール袋に氷を入れたものや、市販のアイスパックなどを、タオルで薄く包んでから患部に当てます。1回の冷却時間は15分から20分程度を目安とし、皮膚の感覚がなくなってきたら一度外してください。凍傷を防ぐため、直接氷を皮膚に当て続けないように注意が必要です。この冷却と休憩のサイクルを、けがをしてから24時間から48時間の間、数時間おきに繰り返すと良いでしょう。

C(Compression):包帯などで軽く圧迫する

患部を弾性包帯などで適度に圧迫することも、腫れを抑制するのに役立ちます。外部から圧力を加えることで、損傷部位に体液が溜まるスペースを物理的に制限し、過度な腫れを防ぐことができるためです。

弾性包帯を、心臓から遠い方から近い方へと巻いていきます。圧迫は、きつすぎず、ゆるすぎない程度が適切です。もし圧迫した部分の指先や足先がしびれたり、皮膚の色が青白くなったりした場合は、巻き方がきつすぎるサインなので、すぐに緩めてください。適切な圧迫は、患部を安定させ、安心感にもつながるでしょう。

E(Elevation):患部を心臓より高く挙げる

可能な限り、けがをした部位を自分の心臓よりも高い位置に保つように心がけます。重力を利用して、損傷部位に溜まった血液や体液が心臓方向へ戻るのを助け、腫れを軽減させる効果があるためです。

足首や膝をけがした場合は、横になってクッションや枕を数個重ねた台の上に足を乗せます。腕や手首の場合は、三角巾を使って腕を吊ることで、座っているときや歩いているときでも挙上を保つことが可能です。特に就寝時や休息時には、意識して患部を高く保つことが、翌日の腫れや痛みの軽減につながります。この簡単な工夫が、回復を早めるための重要なポイントです。

応急手当でやってはいけないNG行動

良かれと思ってした行動が、実はけがの回復を妨げたり、症状を悪化させたりすることがあります。特に、昔から伝わる民間療法や誤った知識には注意が必要です。正しい処置を知ることと同じくらい、「何をしてはいけないか」を理解しておくことは、安全な応急手当のために欠かせません。ここでは、切り傷ややけどの処置で特にやりがちな間違いを具体的に解説します。これらのNG行動を避けるだけで、けがのトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

切り傷・すり傷でやりがちな間違い

切り傷やすり傷に対して、一般的に行われがちな処置の中には、かえって治癒を遅らせるものがあります。誤った材料や方法を用いると、感染のリスクを高めたり、健康な組織を傷つけたりする可能性があるためです。

出血を止めようとしてティッシュペーパーを使うと、繊維が傷口に付着して取り除きにくくなるため避けましょう。ガラス片などが深く刺さっている場合、無理に抜くと大出血を引き起こす危険があるため、抜かずにそのままの状態で病院へ行くべきです。指の付け根をきつく縛るような止血法も、血流を完全に止めてしまい組織が壊死する危険があるため、絶対に行わないでください。

やけどの処置で悪化を招く行為

やけどの際に用いられる民間療法には、医学的根拠がなく、むしろ有害なものが多く存在します。誤った処置は熱を皮膚内部に閉じ込めたり、細菌感染の温床を作ったりして、やけどを悪化させる原因となるためです。

アロエや味噌、歯磨き粉、バターなどを塗る行為は、冷却効果がなく、感染リスクを高めるだけなので絶対にしてはいけません。また、氷や保冷剤で直接冷やすことも、急激な温度変化で皮膚組織をさらに傷つけ、凍傷を引き起こす可能性があるためNGです。できた水ぶくれを意図的に破るのも、感染の入り口を作ってしまうため厳禁です。皮膚に張り付いた衣類を無理に剥がそうとすると、皮膚まで一緒に剥がしてしまうことがあるため、服の上から冷やすようにしましょう。

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