代々木クリニック

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医療コラム

2025.07.30

傷跡の盛り上がりを理解し、適切な治療を選ぶために(ケロイド/肥厚性瘢痕)

傷跡の盛り上がりを理解し、適切な治療を選ぶために(ケロイド/肥厚性瘢痕)
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※本コラムは医療情報の提供を目的とした一般的な解説記事です。
記載されている治療法・医薬品・注射等のすべてを当院で実施しているわけではありません。
当院で実施している診療内容・施術可否・費用等の詳細は「診療科目」ページをご確認いただくか、直接お問い合わせください。

傷跡が盛り上がるメカニズム

傷跡が盛り上がるのは、皮膚の修復が必要な段階を過ぎてもコラーゲン産生が続き、線維が過剰に蓄積するためです。

傷が閉じた後も炎症が長引くと、線維芽細胞の活動が収まりにくく、組織が厚く硬くなります。

たとえば、ニキビ跡や軽いやけどが治った後に赤みや硬さが数か月残るのは、皮内でコラーゲン線維が不規則かつ過剰に増えているサインです。

こうした過剰反応は「体が必要以上に頑張り過ぎた結果」であり、専門的な方法で穏やかに鎮めていく治療が必要になります。

ケロイドと肥厚性瘢痕の違い

見極めの最大のポイントは、元の傷の範囲を超えて広がるかどうかです。

肥厚性瘢痕は傷の範囲内にとどまり、半年ほどでピークを迎えた後、徐々に赤みや硬さが落ち着いていくことがあります。

ケロイドは体質的な炎症反応が強く関与し、境界を越えて周囲の正常皮膚へ拡大し続けるのが特徴です。ピアス孔の周りが元の孔より大きく、かゆみを伴って数年かけて広がるのは典型例です。

境界を越える拡大傾向の有無は、治療難易度や再発リスクを大きく左右します。広がりを感じる場合は、自己判断せず早めに専門医へ相談しましょう。

「赤み」と「硬さ」が生じる背景

盛り上がった傷跡の強い赤みは、治癒のために増えた毛細血管の活動が続くために起こります。

硬さは、過剰に作られたコラーゲン線維が密に束になって沈着することで生じます。

コラーゲン生成が活発な時期にはかゆみが強くなりやすく、入浴や運動で体温が上がると血流が増えて、かゆみが増すことも少なくありません。

赤みや硬さが長期にわたって続くのは、内部で炎症とコラーゲン産生がまだ活発であるサインです。

自分でできる初期ケアと予防

傷跡を目立たなくするには、受傷直後の適切な対応と、傷が閉じてからの継続ケアが重要です。

炎症を抑え、治癒環境を整えるほど、将来の過剰な瘢痕形成を予防しやすくなります。

たとえば、やけど直後にしっかり流水で冷やした場合と、放置した場合では、数か月後の赤み・硬さに大きな差が生じることがあります。

傷が落ち着いた後も保湿を続け、皮膚の弾力を保つことが大切です。

やけど・怪我直後の正しい対応

受傷直後は、速やかに流水で15〜30分しっかり冷却し、清潔なガーゼ等で保護します。

熱を早く逃がすことで深部損傷の拡大を防ぎ、後の炎症を最小限にできます。

顔・関節などデリケートな部位や広範囲のやけどは、軽症に見えても自己判断せず専門医に相談を。

感染の兆候(増悪する痛み・発赤・膿・発熱など)があれば受診を急ぎましょう。

傷が閉じた後の保湿とマッサージ

創が完全に閉じたら、乾燥を防ぐ保湿ケアと、適切な時期からの優しいマッサージを継続します。

瘢痕皮膚は健常皮膚より乾燥しやすく、乾燥は硬さを悪化させます。

市販の瘢痕ケア用ジェルやクリーム(例:ヒルドイド®やアットノンEXクリーム®等)を毎日継続して塗布し、赤みや硬さが続く間はケアを継続します。

市販薬を1週間ほど使っても悪化・改善なし・痛みや膿が出る等の変化があれば医療機関で確認を。

マッサージはコラーゲン線維の不規則な結合をほぐす一助になると考えられていますが、刺激し過ぎは逆効果なので、痛みが強いときや炎症があるときは避けます。

盛り上がった傷跡の標準的治療

盛り上がりが顕著、あるいは症状が強い場合、保存的治療(手術以外)が第一選択になるのが一般的です。

ケロイドに単純切除を行うと、より大きく再発しやすいためです。保存療法は、過剰なコラーゲン産生や炎症を抑えて隆起を平坦化することを狙います。

主に以下を、状態に合わせて組み合わせます。

  • ステロイド局所注射(例:ケナコルト®)
  • テープやシートによる圧迫・保湿
  • 内服薬(例:トラニラスト[リザベン®])
  • ステロイドテープ(エクラープラスター®)

ステロイドテープ(エクラープラスター®)

強い抗炎症作用で瘢痕内の免疫反応を鎮め、線維芽細胞の過活動を抑えます。

病変の大きさに合わせて貼付します。

病変が柔らかくなったらステロイドの注射の併用やテープやシートの圧迫へ移行します。

ステロイド注射(ケナコルト®)

強い抗炎症作用で瘢痕内の免疫反応を鎮め、線維芽細胞の過活動を抑えます。

一般に3〜4週間ごとに数回行い、数か月をかけて赤み・痛み・かゆみの軽減と徐々な平坦化を目指します。

注射は刺激を伴いますが、炎症の速やかな沈静化に役立ちます。

テープやシートの圧迫・保湿療法

ハイドロコロイドのテープを3日置きに交換することやシリコンシートで水分蒸発を防いで湿潤環境を保ちつつ、一定の圧力でコラーゲン産生を物理的に抑えます。

シリコンシートは1日12時間以上を目安に、数週間〜数か月の継続使用が推奨されます。

洗って再使用でき、副作用が少ないため他治療との併用に向いています。

内服薬(トラニラスト/リザベン®)

コラーゲン産生抑制作用と抗アレルギー作用を併せ持ち、強いかゆみを伴う症例で使われます。

注射や圧迫療法と併用されることが多く、服用中は肝機能障害や消化器症状、倦怠感などの副作用に留意し、必要に応じて検査を行います。

耳介のピアスケロイドは緊張がかかる場所ではないので1回は単純切除を試みて良いと思います。

切除が困難な場合は膠原繊維が増勢している内部をとるくりぬき法を行い、可能であれば電子線の照射が望ましいと考えます。

総合的な戦略と専門医への相談

ケロイドや肥厚性瘢痕は、コラーゲン増殖・炎症・血流増加など複数要因が絡む多因子疾患です。

単一療法に頼らず、症状ごとに狙いの異なる治療を多角的に組み合わせることが最も効果的です。

拡大傾向がある、強いかゆみや痛みが続く、日常生活に支障が出るなどの場合は、早めに形成外科や皮膚科で治療計画を立てましょう。

効果の現れ方と期間に関するよくある疑問

瘢痕組織の代謝はゆっくりで、見た目の変化には時間がかかるのが普通です。

かゆみや痛みなどの自覚症状は数週間で改善しはじめることもありますが、隆起の低下や色調が周囲になじむまでには、半年〜1年程度の継続的な治療・ケアが必要になることが少なくありません。

自己判断で中断すると再燃・再発のリスクが高まるため、経過に不安があれば主治医と状況を共有し、疑問を確認しながら進めるのが安心です。

権東 容秀 医師

監修医師

権東 容秀 医師

東京医科大学卒。形成外科・皮膚科医師。専門はアトピー性皮膚炎、創傷外科、熱傷、美容一般。

  • 日本形成外科学会 専門医
  • 日本形成外科学会 領域指導医
  • 日本形成外科学会 皮膚腫瘍分野指導医
  • 日本皮膚科学会 専門医
  • 日本熱傷学会 専門医
  • 日本創傷外科学会 専門医

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